誰かと食べる事の重要性
- t-ohkubo6
- 6 日前
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近年、日本人の幸福度が国際的に低い水準にあることは繰り返し指摘されてきたが、World Happiness Report 2025を読んで強く印象に残ったのは、幸福度順位そのものではなく、「誰かと一緒に食事をする回数」だった。同レポートでは、直近7日間に「家族や友人など、知っている誰かと昼食または夕食を何回食べたか」を各国で比較しており、日本は週3.7回、133位という結果だった(World Happiness Report 2025, Online Appendix, Table A2)。昼食と夕食は1週間に最大14回あることを考えると、日本人は3~4回に1回しか誰かと食事をしていない計算になる。
重要なのは、この「共食(meal sharing)」の頻度が、生活満足度やポジティブ感情と安定した関連を示している点である。World Happiness Report 2025では、国レベルでも個人レベルでも、「誰かと食べる」という行為が社会的つながりや幸福感の指標になり得ることが示されている(World Happiness Report 2025, Chapter 3)。因果関係は単純ではないにせよ、共食が人のウェルビーイングと結びついていることは、国際的にはほぼ共通認識になりつつある。
日本で共食が少ない背景には、単身世帯の増加や核家族化といった社会構造の変化がある。実際、日本では単身世帯が約4割を占め、世帯人員も平均2.21人まで減少している(総務省統計局『Statistical Handbook of Japan 2025』)。しかし、孤食は一人暮らしに限った問題ではない。同居していても一人で食事をする人は少なくなく、そうした孤食は抑うつ症状や健康状態の悪化と関連することが、日本の研究でも報告されている(Kushida O et al., Nutrients, 2015;Tani Y et al., Age and Ageing, 2015)。さらに、質的研究では、生活リズムの違いや遠慮、関係性の距離感といった理由から、同居していてもあえて一人で食べる実態が示されている(Takahashi K et al., PLOS ONE, 2018)。
こうした知見を踏まえると、日本社会では、食事が「栄養を摂る行為」や「効率よく済ませる作業」として重視される一方で、人と人をつなぐコミュニケーションの場として十分に活用されていない可能性が見えてくる。海外では、共食が社会的つながりや帰属感、精神的健康と関係することが、レビュー研究でも整理されている(Middleton G et al., Innovative Aging, 2022)。
一人で静かに食べる時間そのものを否定する必要はない。しかし、誰かと食べる機会が構造的に少なくなっている社会は、結果として人と人とのつながりを弱め、幸福感を下げてしまうのかもしれない。これからの日本では、おいしさや機能性を追求するだけでなく、「誰かと食べること」そのものが、人間性を保ち、社会とのつながりを確認する大切な行為であることを、あらためて共有していく必要があるのではないだろうか。

文責:大久保 剛



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